佐々木譲といえば、冒険小説の傑作である『ベルリン飛行指令』(新潮文庫)、
『エトロフ発緊急電』(新潮文庫)、
『ストックホルムの密使』(新潮文庫)
の三部作を真っ先に思い出す方が多いだろう。第二次大戦を題材にした冒険小説で、『ベルリン飛行指令』と『エトロフ発緊急電』はNHKでドラマ化もされたので、ご記憶の方もあるかも知れない。『エトロフ発緊急電』は沢口靖子主演だった。
しかし、ぼくにとって佐々木譲といえば、大学時代に見た思い出深い映画『鉄騎兵、跳んだ』の原作者として登場したのが、最初の出会いだった。映画を観たのは1980年、池袋の文芸地下だったと思う。熊谷美由紀と石田純一が初々しい青春映画(石田純一はこれでデビュー)で、原作はオール読物の新人賞受賞作品だった。
これを書きながら、『エトロフ発緊急電』と『鉄騎兵、跳んだ』をAmazonで探したが、双方ともビデオのままでDVD化はされていない。日活は仕方ないとしても、怠慢だな、NHKは。是非DVD化して欲しい。もちろん、日活も。
前述の三部作でブレイクしたあと、骨太の歴史小説などをお書きになっていたようだが、ちょっとばかり縁遠くなってしまった。失礼ながら、自分的には「過去の人」に分類してしまっていた。本当に申し訳ありません。しかも、「このミス」で平山さんの『独白するユニバーサル横メルカトル』
に次いで2位を獲得した作品を今ごろ読んでおいての言い草で、本当に申し訳ないと思っています。
前置きが長いが、ともかく、すばらしい警察小説だった。なんといっても、着眼点がすばらしい。手アカのついた題材と思われる警察小説をこんなにも新鮮に読ませてしまう作者の手腕は、見事というほかない。極めて日本的な警察小説として、日本の警察小説史に残るほどの作品ではないかと思うのだ。
主人公は、殺人犯や窃盗犯を手がけたベテランの刑事(川久保巡査部長)だが、北海道警の不祥事の尻拭い人事で、なんと駐在所勤務に飛ばされてしまう。赴任した田舎町が、実に日本的なムラ社会を形成していて、駐在ですらなかなかコミュニティに入り込めない。
その駐在警官・川久保が、極めて日本的な北海道の小さな田舎町で孤軍奮闘する姿を描いた。肩肘を張らず、自然体で事実に対峙する川久保の姿は実に感動的だ。日本の縮図であるムラ社会に風穴を空ける川久保は決してドン・キホーテではない。正義と信念に裏打ちされた行動は、読むものを清々しくさせてくれる。
本書は、連作短編集だが、川久保を主人公にした長編が是非読みたい。ぼくが知らないだけで、もうあるのかな? ともかく、ミステリ好きには絶対のオススメ小説と言える。
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