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2004.12.14

書評 『魔術師(イリュージョニスト)』 J・ディーヴァー

魔術師 (イリュージョニスト)魔術師 (イリュージョニスト)
ジェフリー・ディーヴァー 池田 真紀子

文藝春秋 2004-10-13
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 正直なところ、巻末の法月綸太郎さんの解説を一読して、書評(感想)を書くのがバカバカしくなってしまった。これは解説じゃないよなぁ。熱が入りすぎている。
 ぼくが思ったこと感じたことが書いてあるのは当然のこと、思いもよらなかったことまで網羅された完璧な書評なのですよ。プロにこんな書評を書かれちゃ、ぼくらは出る幕がない。

  それでもめげずにちょっとだけ書いておこうかな……。

 リンカンーン・ライム=シリーズ第5作として上梓されたこの物語は、第1作『ボーン・コレクター』のおもしろさを思い出させてくれる、叡智を尽くして知で知をあらう物語だ。
 正直言えば、ぼくは、『ボーン・コレクター』で度肝を抜かれて以来、ライム・シリーズをおもしろく読んだためしがかった。どんでん返しにこだわるあまり、ストーリーの整合性なんておかまいなしに、郷原ばりの豪腕でストーリーをねじ伏せているように思えたからだ。

 こんな傾向はディーヴァーのどの作品にも当てはまるのだが、特にこのシリーズはそんな印象が強い。
 作者も大変だと思う。捻くれた読者はディーヴァーだからこれで終わらないだろう、どんでん返しがあるだろうという期待があって、作者も思いっきりその要求に応えようとするのだから。
 ディーヴァーが別ネームでしっとりしたハードボイルドを書くのもわかる気がする。

 ところが、この作品では違和感が薄い。
 なんてったって中心に据えられたのは、人間離れした天才的魔術師(イリュージョニスト)だ。
 この作品の魔術師とは、一般に言う「手品師」とは似て非なるもの。物語の中にプリンセス・テンコーが出てきて驚いちゃったけど、あんな人たちのことを指して言うようだ。

 つまり、はっきり言っちゃえば、「なんでもあり」なのだ。
 正直、物語の中に「それは無いだろう!!」と大声を上げたくなる種明かしが何度もあった。しかし、それを行うのは、天才的な「魔術師」である。これが大きなミソで、これだけ優秀なマジシャン(というか魔術師)なら、ありうるか…、と思わせてしまう点だ。
 こう思わせてしまえば作者の思う壺。既に作者の術中にはまっているということなのだな。作中にも出てくる「心理的誤導」というヤツだろう。
 あちこちにちりばめられた「誤導」の中でも、これが物語の根幹を成す最大の「誤導」なのかも知れない。

 まあ、騙されたと思って読んでみて欲しい。
 読み始めたら止まらない。
 心を平らかにして素直に読めば、これほど楽しめる本もめずらしい。

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