書評 『紐と十字架』 イアン・ランキン
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待望久しい、リーバス・シリーズの第一作である。
邦訳順に読んで来た読者には、シリーズで何度も語られているサミーの子供のころの話とか、ジル・テンプラーとの恋愛物語とか、弟の話とか盛りだくさんの興味の対象がある。最大の興味は若いリーバスなのだが。
中でも、最も注目するのは『血に問えば』でも事件の核として語られた、リーバスのSAS(陸軍特殊空挺部隊)時代のエピソードだ。トラウマとなり、リーバスの人生観を作ったと思われる地獄訓練。
これを読むと『血に問えば』でリーバス自身が語った訓練の結末が違っていることがわかる。
まあ、大したことではないんだけど、額面通りに読んでてっきり挫折していたと思っていたぼくはいい面の皮だ。
作者は、どこから読んでも一作完結だから問題無しと言っているらしい。でも、こんな微妙なリーバスの心の動きが、読者に間違って伝わって誤解が生まれてしまうのはやっぱり健全とは言いがたい。
第二作から第六作までも、早めにお願いしたいもんです。
リーバスは41歳、娘のサミーは11歳の設定だ。
連続幼女殺人事件と、リーバスの過去を絡めて事件が語られる。シリーズ後半の花、女リーバスことシボーン・クラーク刑事は出てこない。
確かにリーバスはリーバスに違いなく、孤独に蝕まれている。どこか直線的な不満を感じさせるのは、リーバスの年齢設定か作者の若さゆえだろうか。
物語全体から若さが滲み出て、ともすれば安易に流れてしまったように読めてしまうのは、仕方がないのだろう。
文章も硬くて、肩肘張った気負いが感じられるのもまた、作者の若さゆえだろう。
他にも、犯人に凄みが足りないとか、後半スリラーに転じても緊張感が足りないとか、新聞記者の役割がよくわからないとかいろいろ不満もあるけど、大好きなシリーズの第一作、才気迸る作者の第一作として楽しむことはできたかな。
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