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2007.08.03

書評 『日本国の研究』 猪瀬直樹

日本国の研究 (文春文庫)日本国の研究 (文春文庫)

文藝春秋 1999-03
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 帯に『小泉構造改革の「バイブル」』の文字が躍る。文芸春秋1996年11月号~1997年1月号の3回に分けて連載されたものをまとめた本だ。帯の惹句は決して大げさでなく、本書を読むと、小泉前総理が躍起になって推進した「郵政民営化」の本質があらためて見えてくる。しかし、腐敗は財政投融資についてだけではなった。

 道路公団、郵政、財投、特別会計、公益法人、利権、腐敗、天下り、官僚支配への追求と改革は、すべてこの本からはじまったといっても過言ではない。実際、連載当時から国会開催時に議員たちが文春の記事のコピーを回し読みしていたという伝説の名著だ。巻末の竹中平蔵の解説が、自らの能力不足と悔恨を表しているようでおもしろい。若干痛いが。

 官僚たちの構造的な腐敗がはじまったのは、1960年代からのようだ。「優秀な」官僚たちが、自分たちに都合の良いように法律の穴を突き、「規制」と「許認可」と「カネのたらい回し」と「補助金泥棒」による収奪の法則を作り上げた。それに乗っかる政治家の姿が田中角栄しか描かれていないのは残念だが、本書の主題はそこにはないので論っても詮無いことだ。

 猪瀬直樹の手法は徹底している。どの著作でも同じだが、徹底的に資料を読み上げ、矛盾を浚いだして突き詰めて事実を積み上げる。それでも見えない部分は、現場へ足を運び、また当事者たちにインタビューを行って更に積み上げる。こうして隠された真実、或いは資料から導き出される確信的な推論が炙り出される過程は、ミステリーに通じるところがあり、読者を飽きさせることが無い。

 各省庁が、法律で禁止されている「子会社」のような「特殊法人」をどうやって作ったか。その「特殊法人」が更に子会社を作り、どうやって集金の法則を作り上げたか。それらのシステムにどれだけの税金がつぎ込まれ、無駄に消費されていったか。端的に言えば、現在の日本の行政システムは、官僚が税金を食い荒らすシステムなのだ。まるで社会主義国家のような日本の官僚システムはこれほどであったのか。

 いまでこそ、このような報道をするマスメディアも増えてきたが、10年前当時は誰も教えてくれなかった。しかも、この作業はドン・キホーテで終わっていない。ご存知のように作者は、2001年小泉内閣の行革断行評議会(行政改革担当大臣の諮問機関)に名を連ね、2002年には道路関係四公団民営化推進委員会委員に就任して、民営化を完遂した。

 作者の力がすべてとはいわない。しかし、「日本道路公団」の分割・民営化は猪瀬直樹がいなければ、できなかったのではないか。それ以前に、道路公団と同じくらい財政投融資を食い散らかしていた「住宅・都市整備公団」は分譲をやめ、賃貸に特化するようになった。そして、郵政民営化に至る。

 誤解しないでいただきたいのは、本書は小泉前総理の構造改革を、理論的にバックアップし正当化する目的で書かれたものではないことだ。チラッと小泉は登場して意気に感じたような記述はあるが、郵政民営化についてはそれほど大きなスペースが割かれていない。

 整理できないほどに複雑・巨大化した「特殊法人」。すでに知れ渡っていることであるが、政治の力で解体させるのが難しいならば、お金の出所を押さえようと言う発想が「郵政民営化」の本質だった。これは、行政改革のほんの一部である。本当にいまさらながらで申し訳ないが、本書を読むと腐りきった官僚の本質が見えてくる。基本中の基本の書である。

 続編に『続・日本国の研究』があり、道路公団民営化に際しての一部始終は、『猪瀬直樹 道路の決着』 『道路の権力』で読むことができる。

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