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2007.08.06

書評 『極大射程』 S・ハンター

極大射程〈上巻〉 (新潮文庫)極大射程〈上巻〉 (新潮文庫)
Stephen Hunter 佐藤 和彦

新潮社 1998-12
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 2007年6月1日に公開された映画『ザ・シューター 極大射程』の原作本。
 これぞエンターテメント。文句無く楽しめる。上下2巻とちょっと長いけど、冗長なところがまったくない。ハラハラドキドキの物語の中にいろいろな仕掛けが配置されている。それは時限爆弾みたいなもんだから、より劇的にってのも頷けるんだけど、ラストあそこまで引っ張らなくてもね。そんな仕掛けといえば、ダイイングメッセージまであるのだ。これで本格物の読者まで射程に入れたか。

 何といっても、練りに練られたストーリィが抜群におもしろい。伝説のスナイパー ボブ・リー・スワガーが罠に嵌められ、大統領暗殺犯の汚名を着せられる。そして、もう一人の主人公と交錯する。FBIのニックだ。ニックもまた運命に翻弄される。間一髪逮捕を免れたボブは自らの汚名を削ぐため、愛する人を守るため、陥れた組織を相手にたったひとりで戦争を仕掛けていく。

 この大胆な戦争を仕掛けていく主人公ボブの信条は、
 「自分や自分の大切なものを傷つけようとしている相手以外は、誰も傷つけてはならない」
 「自分の義務だと思えることをする」
 まるでハードボイルドのヒーローのセリフだが、ボブのストイックさはまさにハードボイルドそのものといえよう。銃という武器を持つ者の誇りを端的に表している。この信条を胸に、ボブは人間離れした殺傷力で数多くの窮地を切りぬける。

 作者は「ワシントン・ポスト」の映画批評欄のチーフらしい。だからなのかどうかは解らないけれど、時間経過や場面転換がやけに映画的。騙し騙されの殺戮ゲームはドラマチックに進行し、長いエンディングの末迎えたラスト。大きな時限爆弾が爆発するのだ。賢明なる読者はとっくに気がついているんだけど。これで良いのだな。

 それにしても、、それにしても、アメリカにはこんな銃オタクがウヨウヨしてるんだろうか? 作者からしてが大変な銃知識。この本に書かれた銃に対する薀蓄は楽しめる人とそうでない人がいることだろう。武器を持つ人間にはボブ・リー・スワガーのようなダンディズムが必要なのかもしれない。物語そのものに銃天国アメリカの言い訳めいた一面を見たような気がしたのだけれど…

 93年の出版時に目の早いパラマウントが映画化権を獲得した。しかし、なかなか映画化されず、99年にキアヌ・リーヴス主演でアナウンスされたが、果たせなかった。で、ようやく今回マーク・ウォルバーグ主演で映画化された次第。ところが、あんまり評判が良ろしくない。原作の方がずっとおもしろいとの声が多く聞こえてくる。映画はどうなんでしょうね。
(文章をちょっといじって、サイトから転載)

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