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2007.09.05

書評 『消えるサイト、生き残るサイト』 宇都雅史

消えるサイト、生き残るサイト 「SEO11の戦術」で、絶対に生き残れ!消えるサイト、生き残るサイト 「SEO11の戦術」で、絶対に生き残れ!

PHP研究所 2007-08-02
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 本書は、ネット上に跋扈している安易な「SEO対策」に一石を投じ、正しい「SEO対策」についてサイト運営者を啓蒙しようという意図で書かれたとのこと。企業経営者にありがちな単なる集客本かと思ったら、なかなか読ませる内容だった。グレー部分が多い「SEO対策」について、常々疑問に思っていたことに見事な答えをいただくことができた。

 ブログやサイトなどをやっている方ならば、検索エンジンの威力は充分にわかっていると思う。日々多種多様な「キーワード」で検索され、その検索結果からたくさんの方々が訪問してくれる。ぼくらが貧弱な脳みそで推測したキーワードなど、遥か置き去りにする多彩さだ。

 ちょっと前までは、ネット上で情報を探すときはYahoo!のディレクトリから辿ることが普通だった。しかし、Googleなどの文書検索技術が進歩したことによって、図書館の蔵書目録のようなYahoo!から、検索エンジンはその中身の文章まで正確に検索できる、ハイパーな全能神のような存在になった。

 通常、検索した方が見るのは結果の3ページ目までと言われている。上位30位。しかし、これではネットを使って商売している方にとっては不足だ。自分の商売にとって有益な「キーワード」の検索結果でベスト10、あるいはベスト5くらいに入ると、集客力は一気にアップする。

 そこで、登場したのが「検索エンジン最適化(Search Engine Optimization)」だ。検索結果ページの上位に表示させる技術で、それぞれの頭文字から「SEO対策」などと呼ばれている。どうやったら検索結果の上位に表示されるかなんて、GoogleもYahoo!も公開していない。だから、本当に確実なことなど何もない。

 しかし、ネット上では「SEO対策」専門の業者がひしめいている。風評と経験によって、検索結果上位表示を可能にした会社がほとんどなのだが、正直言って、怪しそうなところがとても多い。ちょっと目端が利いて、ネットの経験がある人ならばわかりそうなものだが、世の中そんな人ばかりではない。

 このあたりを、実際に「SEO対策」の会社を経営して、多くの優良サイト作りに尽力した作者が説いている。ボッたくられるな、騙されるな、と。つまり、本書が薦める「SEO対策」の基本は、安易な小手先の技術に走るなということ。このあたりが、とても買える本だと思う。『「王道サイト」のつくり方』とあるが、まさにそれを実践していらっしゃる。

 ところが、これを読んでも、明日から即実行可能で具体的な「SEO対策」については明快な答えをもらえない。「SEO対策」の基礎の基礎なのだから当然なのだが、淡い期待を持つとがっかりしてしまう。それに、文章が自己陶酔型でヘタクソで、その上スカスカ。論理の展開も、自分の顧客の例を引いているせいもあって、抽象的な記述が多くて、俄かには信用できない部分もある。しかし、検索エンジン対策を通して、正しい商売をしようという熱意は特筆に値する。

 本書を支えているのは、この熱意である。ヘタな文章から熱意だけは痛いほどに伝わってきた。誰でも、熱意さえ持ってサイト作りを行えば、自ずとお客様を騙すようなことに手を突っ込まないし、熱意を持って商売をすれば、無垢なサイト運営者を騙すような悪質なSEO対策屋に引っかかることもない。自分の商売を固めろ、お客さまを第一に考えろということなのだ。

 ネットで商売をされている方ばかりでなく、自分のサイトに検索エンジンからたくさんの客を呼びたい方など、いまいちど初心に帰って、本書を読んでみるのも良いと思う。ぼく自身、「SEO対策」をかなり学習したつもりになっていたが、目からウロコの事実がいくつかあって、とても勉強になった。作者の会社では、日々600にも上るキーワードをウォッチしているそうで、これもまた信頼を補強してくれる。

 ただし、先にも書いたように、どうやって上位表示を決定しているかについて、検索エンジン側は公開していない。だから、あくまでも著者が感じた「正しいSEO対策」であることを理解しなくてはならない。ここに怪しい業者や、怪しい手法が入り込む余地があるわけだ。

 重要なのは、検索順位を決定するアルゴリズムが、日々進化していることだ。一般的なSEO対策業者が行っている「SEO対策」も、いつかはアウトになる可能性がある。過去にOKだった方法が認められなくなった例もある。こうなったときに怖いのは、容赦なくその関係サイト、たとえばそういった「SEO対策」を利用しているサイトまで、まとめて検索結果から消されてしまう可能性があることだ。

 そんな不確かで危険を孕む業界において、なぜ本書が信用できそうなのか、いったいどんなことが書いてあるのか。気になる方は、本書を読んで基本の基本から学んでみてはいかがだろうか。

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