書評 『リオ』 今野敏
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白状すると、作者の作品は傑作との誉れ高い『蓬莱』 (講談社文庫)しか読んだことがなかった。作者の主戦場であるノヴェルスをあまり読まないというだけでなく、どこか固定された否定的な観念があったのかもしれない。2時間ドラマ的であろうとか、安易でありがちであろうとか、過剰にエンターテイメントであろうとか。
読後の感想も予断からさほど遠いものではなかった。言葉は悪いが、2時間ドラマ的な警察小説だった。殺人事件現場から立ち去る絶世の美少女。その後に発生する2度の殺人事件でも同じ美少女が目撃される。しかも、3件の事件はすべて火曜日行われている。つかみは完璧。視聴率はわからないが。
犯人も途中でほぼ特定できてしまう。コナリー的大逆転を期待したが、もちろんそんなものはなかった。ヒロイン・リオの環境と心情や、犯人の動機に執筆時の1997年当時も今も変わらない現代的病巣をもってきたかったのだろうが、どうも薄っぺらに見えてしまう。登場人物たちの痛みも伝わってこない。
主人公の樋口警部補がしきりに語る世代論も非常にウザったく感じられてしまう。これが全体を薄っぺらく見せてしまう最大の原因かもしれない。作者の今野敏は、昭和30年生まれだ。同じく昭和30年生まれである樋口が語る言葉は、そっくり作者の言葉ととって構わないだろう。「団塊の世代」の後始末を強いられた世代。それはよくわかる。
しかし、個人的には安易に世代論を振りかざす人々は、作者が忌み嫌う「団塊の世代」以上にたちの悪い思考停止状態に陥っていると思うので、容易に受け入れることはできない。主人公樋口の保守的で観念的な被害妄想は、読んでいて非常に疲れた。これを別の要素で料理しておけば、もっと良い小説に見えたかもしれない。
この物語最大の魅力は、他の警察小説では見られない主人公樋口警部補の人物造型だ。その最大の魅力を「世代論」であぶり出そうとしているからもったいない。社会の「悪」と呼ばれるすべてを「団塊の世代」に押し付けるような態度に至っては、嫌悪感しか覚えない。社会はそんなに簡単ではないのだ。人物にはもっと背景があるのだ。
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