音評 『ワールド ワールド ワールド』 アジカン
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アジカンを知らない記者の妄想記事が現実に?
昨年秋だったか、後藤正文が結婚するときに、スポーツ紙が「ポップな旋律と独特の歌声の」みたいなフレーズでアジカンを紹介していた。知らないということは恐ろしい。少しでもアジカンを聴いたことのある人間で、少しでも音楽をわかっている書き手ならば、アジカンをしてポップなどとは絶対に言わないだろう。資料をなぞっただけのひどい記事だった。
ググッたら、運良くまだ残っていたのでリンクを貼っておく。ニッカンスポーツだった。いずれ消えちゃうだろうから、引用しておこうかな。
「アジカン後藤が一般女性と結婚」2007年9月22日の記事。わ、そうだった、ニッカンはコピーできないんだった!
4人組ロックバンド、アジアン・カンフー・ジェネレーションのボーカル後藤正文(30)が結婚したことが21日、分かった。相手は同年代の一般人女性Aさん。既に婚姻届を提出しており、結婚生活をスタートさせている。「アジカン」の愛称で親しまれている同バンドは、関東学院大の音楽サークルの仲間たちが96年に結成した。卒業後、メンバーは会社員になったものの、02年に音楽に専念しデビュー。その当時から、ミュージシャンとしての道を選択した後藤を、陰ながら支えてきたのがAさんだった。
04年にシングル「リライト」がヒットし、アルバム「ソルファ」がオリコンチャート1位を獲得。初の日本武道館公園も成功させた。以後、出す作品がすべてヒットチャート上位に食い込む人気バンドに成長し、バンドとしての安定感も増したことからゴールインしたという。
同バンドは、歌番組で歌ったことがないが、多いときは年間100本のライブを慣行。着実にファンを増やしていった。ほとんどの曲が後藤の作詞作曲。 ポップな旋律と後藤の独特の歌声で、ロックフェスティバルでも圧倒的な支持を受けている。また、毎年夏には海外からのバンドも招聘(しょうへい)してアジカンが主催するロックイベント「NANO-MUGEN FES.」を地元横浜で開催している。
昨年11月には初のアリーナツアーを行い10万人を動員。1万2000人規模の会場でもチケットは即日完売となった。11月7日に新曲「アフターダーク」を発売。年末に8カ所9公演のライブハウスツアーを行うことも決定している。プレイベートも充実したことで、今まで以上にポップなロックを聴かせてくれそうだ。
これを書いた記者。恥を知れ!
しかし、この2年ぶりの新アルバムを聴くと、引用記事の最後の一文、「今まで以上にポップなロックを聴かせてくれそうだ。」が現実味を帯びて感じられるから困ったもんだ。アジカンらしいストレートでピュアでソリッドなロックは健在だが、よりポップになった印象だ。前作『ファンクラブ』から一転、明るく前のめりのASIAN KUNG-FU GENERATIONだった。7曲目「ナイトダイビング」なんて、ORANGE RANGEかと思ったよ。
アーティストが世俗と交わって導き出されるもの
そういう意味では、もしかしたら評価の分かれるアルバムかもしれない。しかし、ぼくは成熟だと思う。アーティストは、まず自分の世界を自分の方法で表現しようとする。当然だ。自分を尖らせ、極限まで尖らせて世界を現出する。自分の周りには世界はない。あるのはアーティスト自らの世界だけだ。
しかし、その後徐々にアーティストを取り巻く世界が見えるようになってくる。時によっては、交わらなければならない。そのときの選択がアーティストとしての本領だ。手法と結果は違っても、表現する世界はアーティストそのものなのである。いつまでも尖がってばかりはいられない。聴き手受け手に対し、常に緊張を強いる作品は、人を選んでしまうものだ。
繰り返すが、成熟だと思う。後藤の結婚が精神的な安定をもたらして…、みたいなことは言いたくないが、本当に成熟したと思う。ぼくはものすごく、この後藤の憂いを含んだ声が気持ちよかった。前のめりでいて、刺さってきて突き抜ける稀有な音楽体験をさせてもらった。すごいぞ、進化し続けている。
相変わらず、ソリッドで的確なギターワークと、この手のロックバンドとしてはとても珍しい驚異のドラムワークも堪能させてもらった。
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